序品第一　本文対訳

160 『我念過去世　無量無數劫　有佛人中尊　号日月燈明。　2006/10/08 登録	我、過去世の無量・無数劫を念うに仏・人中の尊有りて日月燈明と号く。
	私は、推し測ることも出来ないほどの過去世を思い出すと、仏（人々の中の尊き者）がいた。名を日月燈明という。
170 　世尊演説法　度無量衆生無數億菩薩　令入佛智慧　2006/10/08 登録	世尊は法を演説し無量の衆生と無数億の菩薩を度して仏の智慧に入ら令（し）めたもう。
	世尊は法を説き、考えられないほど大勢の衆生達、無数の求法者達を迷いから救い、仏の知恵に入らせた。
171 　佛未出家時　所生八王子　見大聖出家　亦隨修梵行　2006/10/08 登録	仏が未だ出家せざりし時、生れし所の八王子は大聖の出家を見て亦（ま）た随って梵行を修す。
	仏がまだ出家する以前に生まれた八人の王子は、偉大なる聖人が出家したことを見て、付き従って快楽を断ち清浄な修行を行った。
172 　時佛説大乗　經名無量義　於諸大衆中　而爲廣分別　2006/10/08 登録	時に仏は大乗経の無量義と名づくるを説きて諸の大衆の中に於て為に広く分別したもう。
	その時仏は大乗経の「無量義」という名の教えを説いて、大勢の聴衆に明かされた。ページ先頭へ
173 　佛説此經已　即於法座上　跏趺坐三昧　名無量義處　2006/10/08 登録	仏は此の経を説き已って即ち法座の上に於て跏趺して三昧の無量義処と名づくるに坐したもう。
	仏はこの経を説き終わった直後、説法の座の上で結跏趺坐し無量義処と名付けられた瞑想に入られた。
174 　天雨曼陀華　天鼓自然鳴　諸天龍鬼神　供養人中尊　2006/10/08 登録	天は曼陀華を雨し天鼓は自然に鳴り諸の天・竜・鬼神は人中の尊を供養す。
	天は曼陀華の雨を降らし、太鼓が自然に鳴り響いた。諸々の天、龍神、鬼神達は人中の尊（仏）に供養を捧げた。
175 　一切諸佛土　即時大震動　佛放眉間光　現諸希有事　2006/10/08 登録	一切の諸の仏土は即時に大いに震動し仏は眉間の光を放ちて諸の希有の事を現わしたもう。
	一切の諸々の仏国土はたちまち大きく振動し、仏は眉間より光を放じて、これら諸々の稀有の出来事を照らし出された。
176 　此光照東方　万八千佛土　示一切衆生　生死業報處　2006/10/08 登録	此の光は東方万八千の仏土を照らして一切衆生の生死の業報処を示したもう。
	この光は東方の一万八千もの仏国土を照らして、一切の衆生の誕生と死の業報処（業因による報いを受ける場所）を示された。ページ先頭へ
177 　有見諸佛土　以衆寶荘嚴　瑠璃頗梨色　斯由佛光照　2006/10/15 登録	諸の仏土の衆宝を以って荘厳し、瑠璃・頗梨の色なるを見ること有るは斯（こ）れ仏の光の照したもうに由（よ）る。
	諸々の仏国土は宝物に飾られ、瑠璃・頗梨の輝きのように見えるのは、仏の放った光に照らし出されたことによる。
178 　及見諸天人　龍神夜叉衆　乾闥緊那羅　各供養其佛　2006/10/15 登録	及び諸の天、人、竜神、夜叉衆、乾闥、緊那羅の各、其の仏を供養するを見る。
	及び多くの天、人間、龍神、夜叉衆（八部衆）、乾闥（八部衆）、緊那羅（八部衆）達も、それぞれの（仏国土の）仏へ供養する様子が見える。
179 　又見諸如來　自然成佛道　身色如金山　端嚴甚微妙　如淨瑠璃中　内現眞金像　2006/10/21 登録	又、諸の如来の自然に仏道を成じて身の色は金山の如く端厳にして甚だ微妙なること浄き瑠璃の中に内に真金の像を現ずるが如くなるを見る。
	又、多くの如来達おのずから仏道を成し、体の色は金山（こんせん：仏身を金の山に譬る）のように威厳があり大変勝れていることは、まるで清らかな瑠璃の真中に黄金の像が現れるような様子であることが見える。ページ先頭へ
180 　世尊在大衆　敷演深法義　2006/10/21 登録	世尊は大衆に在して深法の義を敷演したもう。
	世尊は聴衆の中に在して奥深く容易にはかり知れない教えをお説きになられた。
181 　一一諸佛土　聲聞衆無數　因佛光所照　悉見彼大衆　2006/10/21 登録	一一の諸の仏土には声聞衆は無数にして、仏の光に照らさるるに因りて悉く彼の大衆を見る。
	多くの仏国土ひとつひとつには無数の仏弟子達がおり、仏が放った光に照らされて彼らの全てを見ることができる。
182 　或有諸比丘　在於山林中　精進持淨戒　猶如護明珠　2006/10/21 登録	或は諸の比丘の山林の中に在りて精進し浄戒を持つこと猶、明珠を護るが如くなる有り。
	或いは比丘たちが山中に住んで悟りの道に励み、戒律を正しく守ることは、まるで光り輝く宝珠を護るがごとくである。
183 　又見諸菩薩　行施忍辱等　其數如恆沙　斯由佛光照　2006/10/21 登録	又、諸の菩薩にして施、忍辱等を行ずること其の数、恒沙の如くなるを見る。斯れ仏の光の照らしたもうに由る。
	又、菩薩達が全財産を布施し忍耐の心を保つ修行を行う様子、その数はまるでガンジス河の砂の数のごとく見える。これは仏が放った光に照らされたことによる。ページ先頭へ
184 　又見諸菩薩　深入諸禪定　身心寂不動　以求無上道　2006/10/21 登録	又、諸の菩薩にして深く諸の禅定に入り身心寂かにして動ぜずして以て無上道を求むるを見る。
	又、菩薩達が深く瞑想に入り、心を乱れさせず、身体も動じず、最高の悟りを求めている様子が見える。
185 　又見諸菩薩　知法寂滅相　各於其國土　説法求佛道　2006/10/21 登録	又、諸の菩薩にして法の寂滅の相を知り各其の国土に於て法を説いて仏道を求むるを見る。
	又、菩薩達が寂滅の相(生死の苦しみを超えた涅槃の境地)を知り、それぞれの仏国土において教えを説き、仏道を求めている様子が見える。
186 　爾時四部衆　見日月燈佛　現大神通力　其心皆歡喜　各各自相問　是事何因縁　2006/10/21 登録	爾の時に四部の衆は日月燈仏の大神通力を現じたもうを見て其の心皆歓喜して各各、自ら相問う是の事は何の因縁なるや。
	その時、四衆（比丘･比丘尼･優婆塞･優婆夷）は日月燈明仏が大神通力を現されたことを見て皆心より歓喜し、各々自然に「これは何故か」と、問いかけ合った。ページ先頭へ
187 　天人所奉尊　適從三昧起　讚妙光菩薩　汝爲世間眼　一切所歸信　能奉持法藏　如我所説法　唯汝能證知　2006/10/21 登録	天・人に奉らるる尊は適（はじ）めて三昧より起ちて妙光菩薩を讃めたもう「汝は為れ世間の眼にして一切に帰信せられ能く法蔵を奉持す。我が所説の法の如きは唯汝のみ能く証知せり」。
	神と人間に敬われている尊（仏）はほどなく三昧（瞑想）より立ち上がり妙光菩薩をお褒めになられた。「汝はまことにして世間の人々の眼であり、一切衆生の帰依の対象となり、よく仏の教えを奉持している。私が説くところの教えは、ただ汝のみが間違いなく理解している。」。
188 　世尊既讚歎　令妙光歡喜　説是法華經　2006/10/21 登録	世尊は既に讃歎し妙光をして歓喜せ令（し）めてこの法華経を説きたもう。
	世尊はやがて、褒め称えて妙光を歓喜させ、この法華経をお説きになられた。ページ先頭へ
189 　満六十小劫　不起於此座　2006/10/21 登録	六十小劫を満しても此の座を起ちたまわず。
	六十小劫という長い時間が経過しても説法の座をお立ちになられることは無い。
190 　所説上妙法　是妙光法師　悉皆能受持　2006/10/21 登録	説きたもう所の上妙の法をこの妙光法師は悉く皆、能く受持す。
	お説かれになられた最上の教えをこの妙光法師は悉く全て憶え、決して忘れることは無かった。
191 　佛説是法華　令衆歡喜已　尋即於是日　告於天人衆　2006/10/21 登録	仏は是の法華を説いて衆をして歓喜せ令（し）め已（おわ）りて尋（つ）いで即ち是の日に於いて天・人衆に告げたもう。
	仏はこの法華経を説いて衆生を歓喜させたのち、その日のうちに神と人間達にお告げになられた。
192 　諸法實相義　已爲汝等説　我今於中夜　當入於涅槃　2006/10/21 登録	「諸法実相の義は已に汝等の為に説けり。我、今、中夜に於いて当に涅槃に入るべし。
	「諸法実相（存在するものがすべて持つありのままにして真実の姿）の教えは既に汝らの為に説き終わった。私は、今夜半に涅槃の境地に入る。ページ先頭へ
193 　汝一心精進　當離於放逸　諸佛甚難値　億劫時一遇　2006/10/21 登録	汝、一心に精進し当に放逸を離るべし諸仏には甚だ値い難し億劫に時に一たび遇いたてまつる』と。
	汝は、一念の気持ちを持って修行に励み、自分勝手に振る舞うことから離れなさい。諸仏にまみえることは甚だ困難なことであり、億劫という長い間にでさえ一度遇うことが出来るかどうかなのだ。」
194 　世尊諸子等　聞佛入涅槃　各各懷悲惱　佛滅一何速　2006/10/21 登録	世尊の諸子等は仏が涅槃に入りたまわんと聞きて各各、悲悩を懐く「仏の滅したもうこと一に何ぞ速かなるや』。
	世尊の息子達は仏が涅槃の境地にお入りになられると聞き、各々深く嘆き悲しんだ。「仏の滅せられること、何と速いことなのだろうか。」ページ先頭へ
195 　聖主法之王　安慰無量衆　我若滅度時　汝等勿憂怖　是徳藏菩薩　於無漏實相　心已得通達　其次當作佛　号曰爲淨身　亦度無量衆　2006/10/29 登録	聖主たる法の王は無量の衆を安慰したまわく。　「我れ若し滅度せん時も汝等は憂怖すること勿(な)かれ。是の徳蔵菩薩は無漏の実相に於いて心已に通達することを得たるをもって其の次に当に仏と作るべし。号を曰って浄身と為す、亦、無量の衆を度せん」。
	仏である、正しい法を治める人間の国王は計り知れないほど多くの衆生の心を安らかにされた。　「私がもし入滅したとしても、あなた方は悲しんだり恐れたりしてはならない。この徳蔵菩薩は煩悩を離れた智恵により真実のあり方を明快に理解しており、その次に仏となるであろう。名は浄身といい、無数の衆生を悟りの世界へ導き入れるであろう。」ページ先頭へ
196 　佛此夜滅度　如薪盡火滅　分布諸舎利　而起無量塔　2006/10/29 登録	仏、此の夜、滅度したもうこと薪尽きて火の滅するが如し。諸の舎利を分布して無量の塔を起つ。
	仏はこの夜入滅された様子は薪が尽きて火が消えるようであった。多くの遺骨を処方に配分し、数多くの供養塔が建立された。
197 　比丘比丘尼　其數如恒沙　倍復加精進　以求無上道　2006/10/29 登録	比丘、比丘尼の其の数、恒沙の如し。倍（ますます）復（また）精進を加えて以て無上道を求む。
	ガンジス河の砂の数のように大勢の比丘、比丘尼達が、より一層精進に励み最高の教えを求めている。
198 　是妙光法師　奉持佛法藏　八十小劫中　廣宣法華經　2006/10/29 登録	是の妙光法師は仏の法蔵を奉持して八十小劫の中に広く法華経を宣ぶ。
	この妙光法師は仏の説かれた教えを良く受持しており、八十小劫という長大な期間、広く法華経を説いて世に弘めた。
199 　是諸八王子　妙光所開化　堅固無上道　當見無數佛　2006/10/29 登録	是の諸の八王子は妙光に開化せられて無上道に堅固にして当に無数の仏を見たてまつるぺし。
	これら八人の王子たちはそれぞれ妙光により仏道に開化され、最高の教えを堅く守り、数多くの仏にまみえられる。ページ先頭へ
200 　供養諸佛已　随順行大道　相繼得成佛　轉次而授記　2006/10/29 登録	諸仏を供養し已って随順して大道を行じ、相継いで成仏することを得、転次して授記す。
	諸仏を供養した後、仏の教えに心から従って成仏への修行を行い、相次いで成仏することが出来て、お互いに記別（仏が与える成仏を保証）授けあった。
201 　最後天中天　号曰燃燈佛　諸仙之導師　度脱無量衆　2006/10/29 登録	最後の天中天をば号けて燃燈仏と曰う。諸仙の導師として無量の衆を度脱したもう。
	（これらの仏の）最後の天中天（諸天の中の天、つまり仏）の名は燃燈仏という。諸々の修行者達を正道に導く者として非常に多くの衆生を悟りの世界へ導かれた。
202 　是妙光法師　時有一弟子　心常懷懈怠　貧著於名利　2006/11/03 登録	是の妙光法師に時に一の弟子あり心に常に慨怠を懐いて名利に貧著せり。
	この妙光法師にはその時一人の弟子がおり、いつも怠け心を起こして、名声と利益に執着していた。ページ先頭へ
203 　求名利無厭　多遊族姓家　棄捨所習誦　廢忘不通利　2006/11/03 登録	名利を求むるに厭くことなくして多く族姓の家に遊び習誦せし所を棄捨し廃忘して通利せず。
	名声と利益を求め続けても満足するということ無く、多くの世俗の家をさまよい、教えを学び暗誦することも捨て去り、忘れ去り、精通することが無かった。
204 　以是因縁故　号之爲求名　2006/11/03 登録	是の因縁を以ての故に之を号づけて求名（ぐみょう）と為す。
	これらの因縁により彼は求名と名付けられた。
205 　亦行衆善業　得見無數佛　供養於諸佛　随順行大道　2006/11/03 登録	亦（また）、衆の善業を行じて無数の仏を見たてまつることを得、諸仏を供養し随順して大道を行ず。
	又、（そのような人物だが）大勢の人に善行を行ったので無数の仏たちにお会いになることができ、諸仏を供養し、仏の教えに心から従い、成仏への修行を積んだ。ページ先頭へ
206 　具六波羅蜜　今見釋師子　其後當作佛　号名曰彌勒　2006/11/03 登録	六波羅蜜を具して今、釈師子を見たてまつり、其の後に当に仏と作るべし。号をば名づけて弥勒と曰わん。
	六波羅蜜をそなえて今、釈師子（釈尊）にお会いになることができ、この後、仏になられる。その名を名付けて弥勒という。
207 　廣度諸衆生　其數無有量　2006/11/03 登録	広く諸の衆生を度すること其の数、量（はかり）有ること無からん。
	広く衆生を悟りの世界へ導き入れる事、その数は計り知れないものである。
208 　彼佛滅度後　懈怠者汝是　妙光法師者　今則我身是　2006/11/03 登録	彼の仏の滅度の後に懈怠なりし者とは、汝、是れなり。妙光法師とは今則ちわが身、是れなり。
	彼の仏の入滅後の怠け者とは汝のことである。妙光法師とは則ち、私自身のことである。
209 　我見燈明佛　本光瑞如此　2006/11/03 登録	我、燈明仏を見たてまつりしに本の光瑞はかくの如し。
	私が燈明仏をお見受けしたときに起きた放光明瑞（仏が眉間から白毫相の光を放って、東方万八千の世界を普く照らし出したこと）のいわれはこのようなことであった。ページ先頭へ
210 　以是知今佛　欲説法華経　2006/11/03 登録	是を以て知りぬ、今の仏も法華経を説かんと欲するならん。
	これらの事から感じたことだが、今の仏もこれから法華経を説かれようとしているのだ。
211 　今相如本瑞　是諸佛方便　2006/11/03 登録	今の相は本の瑞の如しこれ諸仏の方便なり。
	今までに起きた出来事は、これから説かれる正しい教えの前に現われるしるしであり、諸仏の仮りの手段である。
212 　今佛放光明　助發實相義　2006/11/03 登録	今の仏が光明を放ちたもうも実相の義を助発せんがためなり。
	今の仏が光を放たれになられた事も、これから”真実のあり方”の意味を説かれようとなされる為である。
213 　諸人今當知　合掌一心待　佛當雨法雨　充足求道者　2006/11/03 登録	諸々の人よ、今当に知るべし。合掌して一心に待ちたてまつれ。仏は当に法雨を雨して道を求むる者を充足したもうべし。
	皆よ、今まさに知ることである。合掌して一心不乱に待つことである。仏は教えの雨を降らして仏道を求める者達を満足させるであろう。
214 　諸求三乘人　若有疑悔者　佛當爲除斷　令盡無有餘』　2006/11/03 登録	諸の三乗を求むる人にして若し疑悔有らば仏は当に為めに除断して尽して余り有ること無から令めたもうべし。
	諸々の悟りの道を求めている人たちがもし疑いや失望をいだいても、仏はそれらの疑惑を掃き捨て、決して後に疑惑を残すようなことは無いであろう。ページ先頭へ

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